RESEARCH & DEVELOPMENT研究・開発

ネットワーク技術の研究開発

iDではネットワーク技術を中心として、5G、IoT、AIの相互作用の研究開発に取り組んでいます。
これらのソフトウェア、ハードウェアのデザインだけではなく、研究開発成果をプロダクトとしてカタチにしています。

日米共同研究開発における多地点同時マイグレーション実験評価

九工大およびニューヨーク州立大学(CCNY)が共同で取り組んだ 日米共同の国家プロジェクトで開発および実験した成果に関する論文が、IEEE INFOCOMで併催されたCNERT 2023でBest Paperを受賞しました。KVMをベースにしたVMのライブマイグレーションとマイグレーションに必要なネットワークパスのOpenFlowによる 動的生成・削除を統合した制御システムによる 多地点同時マイグレーションを日米テストベッド上で実験評価を実施した内容となります。

関連論文

Kazumi Igarashi, Akira Nagata, Yohei Okamoto, Masahiro Shibata, Kenichi Kourai, Masato Tsuru, “Efficient VM migration for multiple destination sites across a Japan-US OpenFlow testbed”, IEEE INFOCOM WKSHPS: The 10th International Workshop on Computer and Networking Experimental Research using Testbeds (CNERT 2023), May 2023. (Best Paper Award)

P4の研究開発

P4(Programming Protocol-Independent Packet Processors)が近年、ネットワーク機器の可用性、拡張性をもたらすとして注目されています。従来のネットワーク機器に実装されたData planeの機能(ACL、各種プロトコル等)はその仕様の範囲内でしか制御できず、個別の仕様や複雑なプロトコルの実装が困難でした。この実装を容易とする言語がP4です。

当社は、このP4を5Gや高速ネットワークを構成する機器へいち早く実装する手段を研究開発しており、P4を推進している日本P4ユーザ会に参加し、実装可能なハードウェア、ソフトウェアトレンドの情報収集や、研究開発成果を発表しています。

https://p4users.org/

AIの研究開発

IoTであらゆるデータが集まるようになり、ICTが取り扱う情報量は益々大きくなってきています。それらの大量の情報を処理するためにコンピューティングは知性処理へと高度化し、情報処理は「脳」に近づいていくことが求められています。そのために、脳がもつ環境適応力や認識力、判断力などの特性を持った人工知能を開発する必要があります。

当社では、人のように外界を把握して学習する認知機能を持った人工知能を開発するための研究開発を進めています。今までに見たことがないものでも分類や判断を行い、経験をかさね成長できるような発達型認知マシンの実現を目指しています。

画像認証技術高速化の研究開発(AIのアクセラレーション)

当社ではAI、監視システム等に適用可能な、画像認証の各処理をハードウェアを活用することで高速化するための研究開発を行っています。

画像の識別にはCNN(Convolution Neural Network)が一般的に使われますが、識別精度を向上させるためには計算量を多くしていかなければならず、一般的なCPUを使用したソフトウェア処理では実用的な処理速度は得られません。この処理をハードウェア(FPGA)にオフロードすることで識別に必要な時間を、ソフトウェア処理の数十分の一に短縮することができます。

ビッグデータから人流量を予測するAIの研究

「ウィズコロナ」、新型コロナウイルスの感染拡大を警戒しながら、経済活動を進めていこうとする社会となり、この感染拡大に影響のある「人流」を意識する生活が継続すると考えられます。

「人流予測」は、人々が行動するための参考になること、事業を行われている方々の顧客数の予想の参考になることなど、より良い社会活動の実現に貢献できることを目的としています。

当社はこの「人流予測」をAI技術を搭載し研究開発を行っています。予測には、過去の実測人流値、気候データ、コロナ感染者数データ等のオープンデータを使用し、強化学習系の手法で分析を行っています。現在のところ翌日から8日後までの予測正解率は92%以上を実現しています。

AIを活用した電気炉操業効率化に関する研究

SDGs実現に寄与する製品

SDGs実現に寄与する研究

環境省 「令和二年度脱炭素社会を構築する情報通信ネットワークシステム評価検証事業委託業務」事業の一環として、鉄スクラップを溶解する電気炉から発生する音を、分析することで、スクラップの溶け落ちタイミングをAIで識別し、効率的な事業の制御をしうることを実証しました。

この実証実験では、従来の深層学習と比較して、ノイズや欠損に強く、連続性のあるデータ認識を得意とする脳型AIを活用することで、溶け落ちタイミングの識別をより高精度におこなうことが可能であり、溶解の電力消費量の削減が可能となることがわかりました。

今後産業活用が進めば、CO2排出の削減が期待され、SDGsの実現に寄与するものです。

当社では、今回の実証のように、脳型AIの実社会システムへの応用について、引き続き積極的に取り組んでまいります。

脳の仕組みに倣った省エネ型の人工知能関連技術の開発・実証事業

SDGs実現に寄与する製品

SDGs実現に寄与する研究

総務省 令和三年度委託研究「脳の仕組みに倣った省エネ型の人工知能関連技術の開発・実証事業」に大阪大学、情報通信研究機構、九州大学、東北大学とともに研究開発機関として参加しております。

Society5.0の進展に際してエネルギーを制約要因としないために、大幅に省エネな人工知能技術を確立することでICT由来のCO2排出を減らす(Green of AI)とともに、既存人工知能では難しい領域やユースケースへの脳型人工知能の適用による作業の高効率化、再生可能エネルギーの導入促進等を図ることでCO2排出の削減(Green by AI)により、大幅な省エネが可能になる人工知能技術の確立を目標としています。

本研究は、カーボンニュートラル、SDGsの実現に寄与するものです。

当社が取り組むテーマは以下の3点となります。

  1. 脳型人工知能システムの低消費電力型ハードウェアアーキテクチャの実現
  2. 人工知能システムにおける高精度消費電力計測ならびに分析技術の確立
  3. 脳型人工知能システムを用いた電炉(再生鉄製造プラント)の低消費電力化

SDNを用いた手術中情報共有システムに関する研究開発

先端医療技術の一分野であるインテリジェント手術室での脳外科手術における情報共有を目的として、次世代のネットワークであるSDN(Software Defined Network)を用いて、例えば熟練医などの手術関係者がインテリジェント手術室の医療画像をいつでもどこでもモニタリング可能な環境を構築する研究に取り組んでいます。JGN-X上で、SDN機能を用いてオンデマンドVPNを構築、QoS制御で医療画像転送時に必要な帯域を瞬時に確保することで、インテリジェント手術室からの情報をリアルタイムに蓄積するプライベートクラウドを介して、遠隔地での高信頼、高精細な情報を共有するシステムを検証します。

本研究は、公立はこだて未来大学、東京女子医科大学、株式会社iDの共同研究として実施しています。

詳しくは総務省のサイトをご覧ください。

実空間情報連動型ネットワークシステムの研究開発

現在普及しているSNSは、一定の関係性を持った「人」とのつながりをベースとした「仮想空間」上でのコミュニケーションツールであるのに対し、実空間情報連動型ネットワークシステム(rSpace)では、人々が実際に生活している空間すなわち「実空間」を対象としたコミュニケーションの支援を目指しています。

実空間上で直接的なコミュニケーションを行える可能性のある人々同士をネットワーク上で結び付けること、またその人々が情報共有を図ることができる仕組みの実現に向けて、国立大学法人九州工業大学ネットワークデザイン研究センターと取り組んでいます。

詳しくは九州工業大学のサイトをご覧ください。

関連論文

永田 晃,中村 勝一(株式会社iD),藤 ひとみ,野林 大起,塚本 和也,池永 全志(九州工大),“r-Spaceシステムによる実空間グループコミュニケーションの実証実験”,電子情報通信学会 2017年総合大会,B-16-10,2017年3月. (掲載予定)

Akira Nagata, Katsuichi Nakamura(iD corporation), Hitomi Fuji, Daiki Nobayashi, Kazuya Tsukamoto and Takeshi Ikenaga(Kyushu Institute of Technology)“Field Tests and Indoor Emulation of Real-Spatial Information Based Group Communication”, in Proc. IEEE PerCom 2017(Pervasive Compupting and Communications), pp. 615-616, March 2017.(to be published)

Hitomi Fuji, Kazuya Tsukamoto(Kyushu Institute of Technology), Akira Nagata and Katsuichi Nakamura(iD corporation), “Effective Data Collection Scheme for Real-Spatial Group Communication Among Mobile Nodes,” Workshop on IoT Infrastructures and Data Analytics for Smart Cities(IIDASC’17), March 2017.(to be published)

藤 ひとみ,塚本 和也(九州工大),永田 晃,中村 勝一(株式会社iD),“多様な通信品質要求を考慮した実空間グループコミュニケーションのための動的情報収集手法”,電子情報通信学会 ネットワークシステム研究会,2017年3月.(掲載予定)

岩本 紋穂,池永 全志,野林 大起(九州工大),永田 晃,中村 勝一(株式会社iD),“実空間グループコミュニケーションにおける情報配信のための複数グループを考慮した経路制御手法”,電子情報通信学会 ネットワークシステム研究会,2017年3月. (掲載予定)

永田 晃,中村 勝一(株式会社iD),藤 ひとみ,野林 大起,塚本 和也,池永 全志(九州工大),“実空間情報連動型ネットワークシステムの実機実験”,電子情報通信学会 2017年総合大会,B-14-4,2016年9月.

新聞掲載「必要な情報、相手絞り交換」(朝日新聞朝刊,福岡県版,2016/11/30付)

情報指向ネットワーク(ICN)の研究開発

情報(コンテンツ)を届けるための新しいネットワークの仕組みであるICN(情報指向ネットワーク)の研究開発に取り組んでいます。ICNとはサーバ(ホスト)の場所ではなくコンテンツ名によりネットワークを機能させること目指しています。ネットワークシステム内の複数のノードにコンテンツの複製を保持したり、ユーザ付近の最も効率の良い場所からコンテンツを提供したりする通信技術です。

情報通信研究機構様からICNに係る開発を一部受注しています。ICNのように高い技術力・研究開発力を必要とする技術に継続してチャレンジし続けます。

関連論文

Yusaku Hayamizu, Akira Nagata, Miki Yamamoto, “On-Demand Routing for Chaining Multiple Functions in ICN-Based In-Network Processing”, in Proc. IEEE LANMAN 2018(IEEE International Symposium on Local and Metropolitan Area Networks), pp. 7-12, June 2018.(Best Paper Award)

情報指向ネットワーク(ICN)の研究開発として、特に、アプリケーション特性に応じた機能の高度化に取り組んでいます。IEEE LANMAN 2018 (Best Paper Award受賞)では、ICNを用いたネットワーク内処理(In-Network Processing)の枠組みと複数のネットワーク内実行機能を経由するルーチング手法を提案し、IoT(Internet of Things)などのデータ処理の実現検討を進めています。

関連論文

永田 晃(株式会社iD),速水 祐作,山本幹(関西大),“ICNを利用したIn-Network Processingに関する取り組み”,電子情報通信学会2018年総合大会講演論文集,pp.SS-15,BP-2-2,2018年3月.

速水 祐作,永田 晃,山本幹,“ICNを利用した処理機能ルーチングの機能制約下での評価”,電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集 2017年,B-6-21,2017年9月.

速水 祐作,永田 晃,山本幹,“ICNを利用したIn-Network Processingにおける複数機能ルーチング手法の提案”,電子情報通信学会技術研究報告,vol. 117,no. 204,NS2017-86,pp. 91-96,2017年9月.

速水 祐作(関西大),永田 晃(株式会社iD),山本 幹(関西大),“ICNにおけるIn-Network Processingのための複数機能ルーチング手法の一検討”,電子情報通信学会 第7回情報指向ネットワーク技術時限研究会,2016年12月.

地理指向ネットワーク(GCN)の研究開発

異種IoTデバイスが送出するデータ間の連携を促進する目的で、空間的に近傍に位置するIoTデバイスの送出データの集約・多重・協調(スクラム連携)が重要となるため、本研究開発課題では、IoTデータのスクラム連携の要素技術として「物理位置調和型通信」のプロトタイプを開発し、実ネットワーク実験を通じて「物理位置調和型通信」およびそれにより基づく「近接空間内IoTデータのスクラム連携」の実現性検証を行う研究を、九州工業大学、福岡工業大学、奈良先端科学技術大学と取り組んでいます。

関連論文

Kaoru Nagashima, Yuzo Taenaka, Akira Nagata, Katsuichi Nakamura and Kazuya Tsukamoto, “Experimental Evaluation of Spatio-Temporal Contents Management based on Publish/Subscribe model on the Geo-Centric Information Platform”, The 22-nd International Conference on Network-Based Information Systems(NBiS-2019), September 5 to September 7, 2019. (will appear)

樋口 伸伍,長尾 健太郎(九州工大),妙中 雄三(奈良先端大),永田 晃(株式会社iD),田村 瞳(福岡工大),塚本 和也(九州工大),“Geo-Centric情報プラットフォームにおける時空間コンテンツの重み付け検索手法の提案”,電子情報通信学会技術研究報告,vol. 118,no. 392,NS2018-179,pp. 7-12,2019年1月.

樋口 伸伍,長尾 健太郎(九州工大),妙中 雄三(奈良先端大),永田 晃(株式会社iD),田村 瞳(福岡工大),塚本 和也(九州工大),“Geo-Centric情報プラットフォームの動的コンテンツ検索手法に関する検討”,電子情報通信学会技術研究報告,vol. 118,no. 250,NS2018-120,pp. 73-74,2018年10月. [poster]

永田 晃,中村 勝一(株式会社iD),田村 瞳(福岡工大),妙中 雄三(東京大),塚本 和也(九州工大),“近接空間内IoTデータスクラム連携を実現する通信技術に関する取り組み”,第30回電気関係学会東北支部連合大会,1B12,2018年9月.

長尾 健太郎(九州工大),妙中 雄三(東京大),永田 晃(株式会社iD),田村 瞳(福岡工大),塚本 和也(九州工大),“異種サービス連携のための実空間連動型データ管理アーキテクチャの提案”,電子情報通信学会技術研究報告,vol. 118, no. 124,NS2018-52,pp. 85-90,電子情報通信学会ネットワークシステム研究会,2018年7月.

永田 晃,中村 勝一(株式会社iD),妙中 雄三(東京大),田村 瞳(福岡工大),塚本 和也(九州工大),“物理位置調和型アドレスに基づくGeo-Centric Networkingの検討”,電子情報通信学会2018年総合大会講演論文集,pp.51,B-6-51,2018年3月.

中村 芳美,長尾 健太郎,樋口 伸伍,塚本 和也(九工大),妙中 雄三(東京大),永田 晃,中村 勝一(株式会社iD),“近接空間内IoTデータのスクラム連携の実効性検証実験”,電子情報通信学会2018年総合大会講演論文集,pp.52,B-6-52,2018年3月.

田村 瞳,永田 晃,塚本 和也,“1次元の地理的位置情報を活用したネットワーク識別子の提案”,電子情報通信学会総合大会講演論文集 2017年,pp.13,B-6-13,2017年3月.

災害対応ドローンの研究開発

災害発生時にドローンを活用する実証実験が盛んになっており、当社は各研究機関と連携しながら、ドローン搭載の通信機能、映像配信、位置測位、電波検出等、幅広くドローンを活用した機能検討から実証実験に取り組んでいます。

当社で蓄積した通信に係る知見を幅広く活用するための取り組み、災害時に活用可能なソリューション展開を目指しています。

自走ロボットによる環境センシングの研究開発

森林の現況把握(環境センシング(情報収集)とモニタリング(状態把握))及びこれに基づく森林の定量化手法の実現、技術的には、センシング機能の向上、データ転送・通信の最適化、自律走行の統合制御等、ICT技術で未来を切り開くことを国立大学法人九州工業大学社会ロボット具現化センターと目指しています。

ファクトリーオートメーション機器用無線インタフェースの研究開発

現在のファクトリーオートメーション(FA)化された生産ラインの課題は、FA機器を制御する高信頼だが高価な工業用コンピュータの削減と、通信確実性を損なうことなく省配線を実現可能な無線方式の導入です。

株式会社iD、国立大学法人九州工業大学の研究共同体で新型イーサネット技術(I/O仮想化技術)と無線LANを組み合わせ、通信確実性を維持したまま設置自由度を上げ、且つ高い信頼性のFA機器間接続装置により高価な工業用コンピュータを置換し、生産ラインのコストを削減する研究開発を実施しました。

人流計測システムの実証実験

北九州スタジアム周辺の、人の集まり、及び、回遊性の確認を目的とした、産学官連携による実証事業に参加しました。

当社は、九州工業大学開発の成果物を開発母体とした、人流センサーを開発し、北九州市小倉駅とスタジアム周辺の人の流れを見える化することで、今後の安心なまちづくりとビジネスの安定に貢献していきたいと考えています。